七人の話 その5/hon
 
と膨らんできた。
「さあ、その血をこの花に擦りつけるのよ」
 彼女は睦夫にバラの花を渡すと、顔を彼の耳元に近づけて指示した。
「そう、花の全体にあんたの血がまんべんなく行きわたるように。手の中で転がして。もっと強くしていいわ。もっと。もっと強く。もっと激しく。破壊してしまってかまわないから。粉々になるまで。強く手の中で、そう、いいわ……」
 バラの花弁が睦夫の手の中で血と混じりあい、粉々に壊れて、床にこぼれ落ちた。
 志穂子は睦夫の右手を両手でつかまえて、そっと持ち上げると、血が出ている彼の人差し指を口にくわえた。
 痛みで熱を帯びていた指先を、急に口にくわえられ、ヒヤリとした感覚が走
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