七人の話 その5/hon
 
身をずるずると引っぱり出して、熱狂的に体を起こすと、彼女の両手の中にはひとつの成育器が抱えられており、そこからいくつかのバラの花が咲いていた。
「見てごらんなさい。一鉢だけバラを破壊せず、保管しておいたの。この隠し場所はミツル兄さんも知らない。兄さんはバラは全て失われたと思っている。私は賢いわ。兄さんを出し抜いて、ついに私だけの秘密を持ったのよ。これは強みといって良いわ。だけどね、私は思った。私は秘密を共有する仲間を持たなければならない。ミツル兄さん以外にね。そして、それは誰か? そう、つまりあんたよ。消去法でね、考えてみれば結局あんたしかなかったってわけ。ナナコ? あれはダメね……あれは、ヒイ
[次のページ]
戻る   Point(0)