七人の話 その5/hon
 
冷静さを放棄しなかった。私は何一つ残さずにいたわけではなかった」
 彼女は四つん這いになると、部屋の角、足元あたりの壁を手でまさぐっていた。
「まったく、この屋敷を設計した人間の頭のなかを見てみたいわ。こんな普通のやり方で入ることの出来ない、隠し通路で繋がれた謎の部屋を作っただけでは飽き足らず……さらに、その内部にこんな隠し小部屋を……」
 彼女は隠し小部屋へ通ずる秘密の扉を探り当て、横にスライドさせて開き、上半身をその小さな入り口から突っ込んだ。腰から下を入り口から後ろに突き出した四つん這いの姿勢で、小部屋の奥の方をなにやらガサゴソとかき回していた。
「ほら……ほらっ……」
 上半身を
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