七人の話 その5/hon
 
れはちょっと信じられないほど美しかったわ。そう、ここはかつて花園だったの」
 志穂子は情熱的な身振りで、中空を睨みつけて言い放った。
「だけど、それは失われた。一ヶ月前のこと。一ヶ月前に全てが破壊され、蹂躙され、失われてしまった。破壊したのは私自身だけどね。どう、この部屋、見れば分かるでしょう」
 彼女は左手の指を広げ、水平に動かして、無残に荒廃した室内を示した。
「私は全てを破壊して、自分自身をも消滅させてしまいたかった。実際にそれを試みた。でもそれは失敗して、私は生き延びた。手元には何一つ残らず、ただ私は生き延びてしまった……でもね、全てを破壊する混乱のさなかにあって、私はわずかの冷静
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