七人の話 その5/hon
 
して、私はその園丁だった」
 まん中から二つに折れて氷山のように切り立った天板の角を踏みつけて、彼女は睦夫の方を振り向いた。
「秘密であることの価値は、ほぼそれが秘密であるというそれ自体のうちに存在する。あんた、これって分かる?」
 睦夫はさっぱり分からなかったので、首を横に振った。
「学ぶのよ」志穂子は断言した。「そして理解しなさい。かいつまんでいうと、秘密はバラしちゃうとつまんないってこと。だから、秘密を知るものは、秘密を守らないといけないの。私がバラの栽培を始めたのは二年前。ここに閉じこもって住むようになってすぐに、ミツル兄さんがコールドスリープ処理されたバラの種と専用の成育器とを、
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