七人の話 その5/hon
の壁紙が切り裂かれ、棚や引出しなどの調度類が床に倒れ掛かって無秩序に重なり合い、そこでは形あるものは隈なく叩き折られ、捻じ曲げられてグロテスクな凹凸を晒している。また床の中央から小さなキッチンにかけて、細い鉄棒を組み合せた何かの器具が目茶目茶に砕かれて放置されており、そこから黒っぽい土があふれて床にこぼれていた。さらに部屋全体をかさかさに干からびた薄茶色の植物片が、散らばって覆いつくしていた。
小型の爆弾が室内でヤケクソに炸裂したかのような部屋の荒廃ぶりに、睦夫は呆然と戸口で立ち尽くしていた。
「ここはかつて花園だった」
志穂子は家具の残骸を踏み越して、部屋の奥へ進んでいた。
「そして
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