七人の話 その5/hon
 
だけそこからのぞかせて、「ついてきなさい」と睦夫に命じると、その秘密の通路の奥へ静かに消えていった。
 睦夫は彼女の後を追って、おそるおそる隠し戸をくぐった。


 天井の数箇所に結いつけられた電球が通路をぼんやり照らしていた。ひと一人ようやく通れる狭い通路は、途中1メートル近い垂直な段差や急カーブがあり、睦夫は節々を圧迫されながら、体をくねらせるようにして這い進まねばならなかった。
 通路を抜けおえると、それほど広くない一室に出た。その部屋の内部は、ひとつのルームランプで弱々しく照らされていたが……睦夫はそこで我が目を疑うほどの惨状を見出した。
 それは痛ましい廃墟だった。部屋中の壁
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