摩周湖/池中茉莉花
わたしにも そんな季節があった
今日はいわない 絶対 いわない
地下鉄に揺られながら つぶやきつづけるのに
学校について 彼の顔をみたとたん
「もう、別れよう」なんて
自分の心が 分からなくなってしまう
ふたりとも霧の中で生きていたんだ
腕のうぶ毛に こまかな水の粒が吸いつき
素肌にしみこんでゆく
体じゅうに震えが走る
じわじわと 疲れがまし
背骨がぐらつく
同時に足を 後ろに引いた
その瞬間
目の前の 真っ白な幕が
まん中から すうっ
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