sketches/鴫澤初音
帰ってきて、私を泣かせた暖かさ、と沈丁花の匂い。
そう、三年前も同じように咲いていたよね。あのころと
今と、何が違うのか、わからないまま、あの匂いの中で
泣いていたよね。三年前の私を思って、思い続けて、
生きていく、こと。三年前のあの夏、暑さなんて関係なかった。
あの光の下で生きていくことだけが叶わなかった全てを
眼から取り去って、輝く鼓動を感じさせたんだよ。
冬が終ってしまうことが、春の暖かさを少しも愛おしく
しなかった。あなたと今更セックスしたくなかった。
ごめんなさい。謝る
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