sketches/鴫澤初音
 
ってつけたような顔が嫌いだった。
    言葉の端々も、髪の毛の黒さも、睫毛も指先も、
    全部血が出るまで殴って、蹴って、切り刻んでやりたい、
    死ね、

    いっそ死んでくれたらいいのに。
    そうして心の平穏を取戻したい。
    日々が続いていくことに苦しい。
    君を思い出したい。
    繋がりあえなくてもいい。
    濁った記憶の上に君を塗りつけて、
    掬った息を吐いていたい。
    そう、思う。

    知っていることを手の平に思い描いていく。
    私が見知ったこと。
    空が高かったことや、川面に映った菜の
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