sketches/鴫澤初音
 
菜の花の黄色、
    鳥が羽を広げて飛んでいくこと、
    冬鳥の帰り道、懐かしむ、全ての美しいもの、
    手の平を細く、かきわけて。

    進む道をみたい。
    咽喉の奥にたまった唾を吐き出して、
    鍵をかけた自転車に乗る。
    まだ息をひそめて、いて。
    思い出してみる、君の言ったこと、一つ、一つ。



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  そういう小説があった。もう二年も前に読んで、
  それから部屋の本の中に埋もれて探しても見つからなかった。

  三月さんは友達でもなんでもなか
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