【エッセイ】裏庭について – それからすこし家の話/mizu K
 
、とりあえず空間があるので、ツツジや水仙を植えて
みました風情の、西日本の一般的な日本家屋によくあるなんの変哲もないものである。
そこではそれほど遊んだ記憶はないのだが、なぜだか柿の木に登っていた父か伯父を下
からぽかんと見上げていて、落ちてきた木片が目に入って大慌てとか、そういうことは
あれど、いま考えればこぢんまりとしつつもなかなかゆたかな庭であった。空はやや南
西にむかってひらけていて、妙見と金比羅が見える。その空はたいてい晴れていたよう
に思う。春には、金比羅の桜の群生がぼんやりかすんでほんのり白く灯る。

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 「裏庭」というものはどの家や屋敷にあるわけでなく、
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