【エッセイ】裏庭について – それからすこし家の話/mizu K
線香のにお
いもまざっていたのだろうがそれだけではなく、どこかかんばしい、ふしぎと落ちつけ
るものであった。柱や梁に使われている木材のにおいと思わなくもなかったが、もう何
十年も建っている古い家なので、新しい木材の発するにおいともまた違う。
幼少のころ、まだ表に小屋があったとき、そこには新築の家の柱にするのだろう、大
きな角材が横置きに固定してあったことがある。その木材の周辺や地面には、木目のう
つった、なにか薄い紙のようなものが丸まって散らばっていた。あたりには、木のよい
かおりがする。それから伯父がやってきて鉋を掛けるのを間近で見た。しゅーっ、しゅ
ーっという音ともに魔法のよ
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