忘れもの/恋月 ぴの
 


このぐらいの大きさでハートの形をしています
わたしは手を広げ係員に大きさを示した

それなら既に届いていますよ
係員はわたしの前に忘れものを差し出した

それは本当にわたしが忘れたものなのか
どこがどう違うのか上手く説明出来ないけど
違うといえば違うような気がする

はいはい確かにこれですよね
係員は一件落着早く出て行けとばかりに
それをわたしに押し付け再び記録簿に目を落とす

急かされるまま一礼して駅務室のドアを閉めた

良く晴れた日の晩はきりきりと骨が軋むまで冷え込む
駅の係員から押し付けられた忘れものを抱え
わたしの暮す町へわたしを運んでくれる最終
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