復想園(2)/生田 稔
故悪魔の父が彼に近づけなかったか、突然霊感の如く頭にひらめくのを知った。
「神だ!」と彼は叫んだ。私は神によみされていたのを知らなかったのだ。然しそれと同時に彼の周囲に悪魔の手下達の声がいくつも現れて攻め寄せるのを知った。現れた声は続々と彼を攻撃し始めた。
彼は自分の滅亡の時が来たのをさとった。神を本当に見たとき、それが自分の最後なのだ。そして父の悪魔の顔を再び見ることはなく、静かに自分の魂が消えてゆくのを知った。
深山の瞑想の中にひそかに、その型を見た想いの園はほんの瞬時彼の心の中に大きな愛の手に抱かれて、堂々たる光輝を放つのを見た。
彼の魂は去った。然し彼の最後を見にやってきた悪魔の
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