復想園(2)/生田 稔
 
の悪魔の社会の凋落は著しい。だから近頃彼の父は巧妙さを失って、自暴自棄になりぎみである。産まれついての悪魔の子である彼に、悪魔には決してできないことをされているからだ。悪魔は昔から最後には魂を奪う目的で幾多の天才を造ってやった。音楽に、文学に絵画に彼をたたえる者達によって偉大な業績を行わせた。
 然し彼らも一時の幸福を得た後悲惨な境遇に堕ちて死んでいった。悪魔の力によって、
芸術の狂気の中で憔悴し果てた芸術家達の最後は哀れではなかったか。悪魔に組せぬ数少ない芸術もあったが殆んどは生前には名がでずささやかに、しかし平安に死んだものも多かった。
そのようなことを彼は考えた

夜明けまで灯りの
[次のページ]
戻る   Point(0)