復想園(2)/生田 稔
 
き入る青年であったりする。そのようなものに心を惹かれて安らぎと羨望を覚えると、残酷な兄弟たちは突然に姿を変えて、アハハと笑って牙をむき出して現れ、。又姿を消してしまうのだ。
 どうしても忘れ得ないのは、ある田舎町にある魔窟を通り過ぎた日のことだ。
 両側にづーと並ぶ娼婦屋の窓から怖い顔をした半裸の女達が、首うなだれて道を歩く自分を詰っていたことだ。未だ悪魔の社会にいた若い頃は、他の兄弟とは違うといって随分もてなしてくれ彼女等なのだが、あんな女たちに心惹かれない今は、私は呪わしきものとして詰られているのだ。
 とうとうこの有名な、父のしばしば現れるスラム街のどやに、父に会うためにやってきたが、
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