復想園(2)/生田 稔
 
復想園 (2)

 ああ、俺は幾年想いの中をさ迷って来たのだろう、巷の彼方此方で父の計画のために追われ、兄弟でさえも俺を嘲った。然し俺は不思議に深山で知った神の知識によっていつも救われていた。悪魔の子のおれでも神の恩恵にあずかることが出来るのだろうか、昨日あの街角で人を集めて神の知識を説いた時、感心してくれた人がいた。知らずに本心であの話をしていたのだ。俺は悪魔の子に生まれるべきではなかった。兄弟たちが時々自分の幸福を見せる為それとはなく姿を変え、おれの目前を。通り過ぎるのだ。それは或る時には貴婦人と紳士であったり、若く純情そうな男女の若者であったり、あどけなく笑い興ずる子供たちや音楽に聴き入
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