ひとつひとり/石畑由紀子
 
中継で
片足ずつを分けあって
ベトちゃんとドクちゃんが引き離されたとき
私は涙があふれた

ひとりだね
これからはひとり同士だね


恋をするたびに
私は彼じゃなくて
どうしても
誰も私になれなくて
くもった窓の内と、外
ふりつもる痛みを
あの日ドクちゃんは片足で飛び越えた

自分の一部 じゃなくなった
ベトちゃんの手をとって



   *


私たちが皮膚ごしに灯をともしていたころ
ベトちゃんは静かに灰になった
ドクちゃんは大声でさびしい、さびしいと号泣したそうだ
本当に
ひとりになってしまったね
送りだした足は
もう片方の記憶は
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