ひとつひとり/石畑由紀子
は
どんなふうに残っていますか
*
ひとつになったんだね
卒業前に別れたあと
その彼はトーキョーへ行ってしまい
しばらく同窓会もないので
もう十年以上会っていない
最後に会ったときはたしか互いに笑ったはずだ
こどもだったよね、でも
こどもなりに、だったよね、と
そんな昔ばなし
私たちが
出会うずっとまえの
*
こどもなりに、だった私は
おとなと呼ばれる歳になって今
それでもなお
重ねても目をふせることはできずにいる
それでも私たちが互いの
その片足であったならどうだったろう
窓を越え、なにもかもに
気づいて
さびしいときは
大声で泣ける
そんなことを浮かべては
ちいさく笑う
もしもはない
もしもは
ない
私たちは
ひとりだ
かなしいほど
遠ざかる
そのいのちが
かなしいほど
愛しくて
おかしい
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