パリサイ広場にて/楢山孝介
んな奴がいるせいで、歌えない
歌えないからお金ももらえない
だから今日は泊まるところがない
声をかけた私に、女は不満そうにぶちまけた
金を稼げるほどの歌声なのか
少し興味を持った私は
うちに来ないか、と誘ってみた
居候は横で「そりゃあいい」と言った
「いや、おまえは出て行けよ」と私は言った
追い出したくなっていたところだった
歌いもせず、ろくに家事もせず、女でもない
そんな居候はもういらなかった
「そりゃあないよ、駄目だよ。
この女の歌は、本当は全然良くないよ。
実は俺聞いたことないよ。
ここ来たのも初めてだよ」
支離滅裂なことを居候は言い出した
女は笑
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)