この世界を離れて ★/atsuchan69
 
そのあと父ちゃんの帽子を手に円陣にできた人だかりをまわった。そのあいだに母ちゃんがまたべつの歌をうたう、

 世界はだれのものでもなくて
 あたりまえのように いつもここにあるけれど
 影をのこす まぶしい日差しのあたる真昼の今でなく
 真実はひとつぶの星の瞬き、
 夜空のちいさな耀きのなかにある
 それは遠い夢 叶わぬ思い  
 でも本当はもっと近くにあるわ
 眼をとじると、きっと見えるはず もうひとつの世界が‥‥

 誰かが帽子のなかに丸い小麦菓子をいれた。またジャリ銭のほかに紙幣をいれる者もいた。りんごをいれる者もいた。そして帽子はたちまち重くなり、ついには子どもの僕に
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