この世界を離れて ★/atsuchan69
 
通りでこのあほんだら見かけたよって、もしやと思いもどってみたら‥‥案の定やったわ」

 そしてこれは子どもが見るべき光景ではなかったが、
「いっしょに見よう」
 と、父ちゃんは言った。
 手をつながれて見たのは、つめたい夕日のなかで数人が棒切れをもってうしろ手にされた男をぶつさまだった。そのたたきかたははげしく、たちまち服はやぶれ、からだじゅう血がにじみ、そのうち顔や背中のかわがぺろりとめくれた。
 男はうたれるたび、
「ぎぇひぇーぎゅあがぁ」
 まるで人とはおもえない声で鳴いた。――いや、それはまちがいなく獣そのもののさけびだった。


 やがて春がきてみわたすかぎりのレン
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