この世界を離れて ★/atsuchan69
レンゲ畑をたくさんの蝶たちがて舞いとんでいた。父ちゃんがハーモニカをふき、母ちゃんは上機嫌で父ちゃんのつくった芝居の歌をうたっている。それは旅の吟遊詩人がお城からお姫さまをつれだす歌で、じっさい母ちゃんも父ちゃんにつれだされたのは本当だ。ところどころ継ぎは当たっていても、白いドレス服の母ちゃんはまだお姫さまのつもりだった。
そして母ちゃんは夢見るようにうたった。
見てごらん こわくなんかないよ
かんたんさ 一歩だけこっちへすすんでみて
君は君以外のものを棄てればいい
お金もいらないし 失うものも何もない
永遠にかわらぬ愛とひきかえに
ぜんぶ棄ててしまって笑いころげよ
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