いぬけ/佐々木妖精
 
まった雪原の中で
自分だけが汚物であるような鬱屈は
錨となって歩幅を狭め
踏みしめた鳴き声の響くこの地は
新雪の仮宿
もう埋まってしまっただろうか
たった一つの場所

闇を照らす雪は
影に触れながら
徐々に消え去り
影がそれを飲み込み膨張する
「振り返ったら食われるぞ」
風が伝える唯一の
受け取れる音

にべもなく欠けた月が
また満ちるのを小刻みに眺め
満ちることなく雲で覆われ
粉雪が睫毛の上へ落ち
体温と交わり
滑り落ちる
濁りなきパウダースノー

騒々しく喚く雲から
青白く光る腕が何本も伸び
その嫉妬は雪原へ突き刺さり
肥大した影が身を乗り
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