靴/アンテ
 
止めて
後ろへ蹴り出す
なにも考えない
心臓が暴れだす
いつものインターバルで
吸って 吐く
くり返し
右足の次は左足
なにも感じない
風景が溶け合って
識別できなくなる
夕陽がまぶしくて涙が出る
だれともすれ違わない
土手をそれて
住宅街を抜ける
つき当たりを右
ゆったりと腕を振る
苦しい
歩調はゆるめない
商店街はひっそりしていて
店員も客もいない
足音が靴の後ろから
おとなしくついてくる
球状の塊が
耳の後ろあたりをゆっくりと動いている
通いなれた美容院が
いつもの花屋さんが
とつぜん視界のなかで像を結んで
後方へ飛び去っていく
やっ
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