鳥が死なない/楢山孝介
寝る前に、一日が終わる前に、鳥が死ぬ話を書こうとしたが、鳥の死ぬ姿を見たことがないので手が止まった。鳥の死体はいくらでも見てきたが、鳥の死ぬ瞬間は見たことがない。いつでもどこでも鳥は死に続けているのに。
鳥が飛ぶ話を書こう。今日も今も鳥は飛んでいる。昨日も飛んでいた。明日も飛び続けるだろう。飛び続けた後いつか墜ちるだろう。墜ちて死ぬところを、死んでから墜ちるところを僕は見ないだろう。飛ぶ鳥の姿を、木や電線にとまっている鳥の姿を、河原や海辺で羽根を休める鳥の姿を僕は見るだろう。飛べない僕は見るだろう。僕の見た鳥たちはいつか死ぬだろう。鳥を見た僕もいつか死ぬだろう。
どこか仕種が色っ
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