風塵/石川和広
 
けっこうそれは近いのだ
もし呪いだとしたら
あまりにも空白であり
ところで私は充たされているのだ
あまりにも空白であり
公園の側の枯れた並木を通る
あまりにも空白であり
ところで私は充たされているのだ

死を見たと

空の姿
その思い
電線の、看板の看板
すきまの空は空気ではないだろう
物理的宇宙を滅却して
ものは現われを過ぎこして
あまりにもここにありすぎる

建物の
茶色の建物の
ところで私は充たされているのだ
それは空白であり
そこにいるようであり
すばらしい幼児のフードつきの
母親のかげろうの、幼児の叫ぶ声の
あまりにも見ることができる
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