永遠の懐胎/鈴木
葉に驚き緊張した。
「なんだって。気配は感じないぞ。狼か」
「違うよ。羊だ。私の位置からしか見えない」
警戒心は解かぬまま発見者をどかせて座ると、遠くいくつもの木と木の隙間からこちらを向く雌羊の顔が覗いた。カタミミは困惑した。実在感がないのだ。
やけにはっきりと暗がりから浮かんでいる。またこちらを見つめる目が闇と同じ黒で貫かれているし、おまけにまったく動かない。睨みつけても笑いかけてもまるで反応しないのだ。だがなにより不思議なのは、どうも、
「毛が生えている」
ように見えるのである。
カタミミはかたわらの羊に視線を戻した。毛はない。
「なんだあれは」
「
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