永遠の懐胎/鈴木
尽きることない草原が広がっているという。
カタミミが顔を上げると、根から離れて座っている一匹の羊が見えた。目を瞑ってなにか呟いている。またか、とため息をついてカタミミは傍へ近づき声をかける。
「ブンガク」
「なんだね、カタミミ」
まぶたは閉じたまま首を傾げたこの羊は群れ一番の勉強家で、実践的な術策から平和だった時代に栄えた文化まで多岐に渡る知識を持つ。特に後者は毎日が生死の境界線上である羊たちの中からは忘れ去られたものであるため、度々詩吟などする彼はいつのまにか文学そのものとして呼ばれるようになったのだった。
「ブンガク、少しでも空腹を紛らわせないと後がきついぞ」
「ごまかし
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