永遠の懐胎/鈴木
海にて我の沈思黙考するは、肉片を前に覚えし欲は食と性いずれやとあらむといふなり。
ぼくはまだちいさい。
三、恋日譚
とある惑星の広葉樹林では毛のない羊が喋るという。ここに記すのは木漏れ日を探す旅をする二十三匹の話である。「寒い」「寒いね」「今日は一段と冷える」「今日が今日なのかわからない」
「休憩にしよう」
リーダー格のカタミミが言った。彼の右耳は狼との格闘で食いちぎられてしまっていた。全滅の危機の中で群れを守り生き残ったこの英雄を同輩は畏敬の念をこめてカタミミと呼ぶ。一同は木の根をかじり始めた。
木々が絶え間なく屹立し太陽は見えない。地に張り付く
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