永遠の懐胎/鈴木
 
があった。そこに彼は見た。幹に埋まった彼女の顔を見た。
 頭蓋には深い皺の刻まれた皮が張り付き、歯茎の剥き出しになった顎がだらりと下がっている。からっぽの眼窩では甲虫どもが蠢いている。血のしたたる足で近づくと後方から獣のうなり声がした。彼女のすぐ前へ達する頃にはもう三匹の狼が獲物に飛び掛る体勢を整えていた。だが彼は一瞥も与えなかった。ただ光だけを見る。
黄色がかった毛が頭に乗っている。
 水上に咲く花に見えた。
「『私は醜い。しかし――』」
 折り重なった牙が毛と右耳のない羊に突き刺さった。
「『美しいものが好き』」
 これが僕とアイビーの出会いだ。


 四、永
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