永遠の懐胎/鈴木
 
、永遠の懐胎

 アイビーと再会したのは、地球が人間を忘れてから二億回ほど公転した夕暮れのことだ。この時節は氷河期の真っ最中、夕暮れといっても空は厚い雲に覆われて白かった。よく雪を降らせた。当時の僕は石英で、思うさま懶惰に暮らしていたのだけれども、言ってしまえば、そのとき抱きとめた雪の結晶が偶然アイビーだったわけだ。
「あら久しぶり」
 六角形の彼女は言った。
「前に会ったのは私が睡蓮だったときね。あなたは人間の子供で、相変わらず一生懸命だって笑ったな」
「僕はいつでも変わらないよ」
 話したいことは山ほど堆積しているのに、軽い言葉ばかり出てきて歯がゆい。雪が降り積む。視
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