永遠の懐胎/鈴木
 
もしれなかったが、そんなことは、じき念頭から消えた。自分たちが生きているのは彼女のお陰だった。自分たちが死んでいくのは彼女のせいだった。自分たちがしゃぶっていたのは彼女だった。全速力で駆ける。密生する木を避けきれず傷が増えていく。根につまずいて転び立ち上がる。体中が赤く染まりそれでも進むと急に開けた場所へ滑り出た。
 羊が数千匹も寝られるような広場だった。乱立していた木々はなく、だが中央に巨木が一本そびえていた。
 通常の二十倍ほどの太さのそれは頂きの見えないくらい高く伸び、蜘蛛の巣のように分かれた枝がそれぞれ葉を茂らせ広場の空を九分九厘は覆い隠していた。が、一つだけ日差しの舞い込む点があ
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