永遠の懐胎/鈴木
 
に舌を這わせ歯を立てる。そしてたまに天を仰ぐ。塞がれている。ブンガクの声がカタミミの片耳を包み込む。
「『私は太陽に恋をした。だってなによりも美しいから。四肢を広げて、できることならむくむく広がって、日差しを独り占めしてしまいたい――』」
 森がさざめく。風が吹いている。千切れた葉が一枚、カタミミの鼻を掠めて飛んでいった。彼は行方を追った。葉は木々の間に消え、その先には雌羊の顔が浮かんでいた。
「『私は醜い』」
 頭に毛が生えている。
「『しかし――』」
 皆まで聞かずカタミミは走り出した。自分が急に消えてしまったなら群れに動揺が生じ伝播し肉食獣に位置を知らせてしまうかもし
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