永遠の懐胎/鈴木
 
、最も強い羊たちが群れを囲み、弱いものを守るよな。当たり前だがこのときも同じ策が採られた。けれど一つ違った」
「まさか」
「毛の生えた雌羊が輪の外へ押し出された」
「ああ」
「どうせ追い出すならと狼への陽動に使ったのだろう。酷い話だ。かの夜の逃走こそ阿鼻叫喚というのか、相当数の同志が喉笛を噛み切られたらしい。なんとか全滅は免れたらしいが。じゃなきゃ我々はここにいない。そしてともかくも平和な日々が戻り、誰もが惨劇の記憶も忘れかけたときになって、彼女が帰って来た」
「毛の生えた雌羊」
「そう。なぜ生きていられたのか問われて彼女は言った『毛が喉につまるから食べたくないって』。まあ滑
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