永遠の懐胎/鈴木
 
匹、毛が生えているのがいた。長老たちは渋面を作ったようだ。毛の生えた羊は災いを呼ぶ、いつか追い出してしまわなければ、と。話が漏れたのかどうかは判断しかねるが、やはり幼い頃からなにかと排斥された存在だったようだ。水飲み場で泥をなめさせられたり、眠っているところを蹴られたり」
「考えられんな」
「俺たちは常に死と隣りあわせだからな。いちいち誰かに悪意を向けていては群れ全体に致命的な影響を及ぼす。そもそもの前提が違うのさ。異なる種族と考えてもいい」
「なるほど。続きを話してくれ」
「ついに長老どもの計画が実行に移された。ある夜、彼らはかつてないほど大勢の狼に襲撃された。普通は逃げる際、最
[次のページ]
戻る   Point(4)