永遠の懐胎/鈴木
 
へ踏み出していた。ブンガクが鋭く言った。
「待て」
「でかしたブンガク。早く日の当たる場所へ行かなければ」 カタミミの心は日なたへ走っていたが、
「待て。話を聞け」
 再度ブンガクは止めた。
「一体なんなんだ」
「おかしいと思わないのかね」
「なにが」
「まず、あの羊には毛が生えている。はるか昔には少々いたらしいのだが俺は生まれてこのかた見たことがない。まあいい、例があるのだから百完歩ほど譲って存在したとしよう。しかし彼女は一匹のようだ。距離があるとはいえ群れに属しているなら気配くらいしてもいいだろう。この殺伐とした時勢に雌羊が単独で生きていけるわけはないと、我々を
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