イノセント/ホロウ・シカエルボク
時計を見た
いつもよりゆっくり
刻まれていることが判っていたから
時が流れていることが判っていたから
文字盤を眺めて
がらんどうの空間にこだまするリズムを
秒針の振動に当てはめようとしていた
耳を澄ませて
意識を強く持てば持つほど
そのリズムは時からはずれていった
規則的な流れの中に現実なんて呼べるものはありはしないのだ
目の前のカップには
ろくに口をつけていない珈琲
君のほうにあるのはミルクティーだったか
そんな数十分前のことすら思い出せなくなるほど
頭の中を埋め尽くしていたのはいったいどんなことだったのか
言葉に出来るときはいつも手遅れで
き
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