七人の話 その4/hon
 
ことで、価値を見出されることがないとはいえない。そこで、非論理性が導入されて……」
「私、ミツル兄さんの使ってる刃物は、あまり怖くないわ」
「なぜ」
「指先の延長みたいに自在に、滑らかに動くから。見ていて安心する。今も、なにか可愛らしいものが出来つつある」
「これは鴨っていうんだ」
「カモ?」
 充は手をのばして、鴨の彫刻を小遥に手渡した。
 小遥はそれを受け取ると、上から見たり、裏返して下から見たり、後ろや正面から眺めたりした。そして、彫刻の顔を見つめながら、自分の口を平らに突き出して、鴨の顔マネをした。
「なんだか、間の抜けた、のん気そうな顔をしている」
「あげる、それ」

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