七人の話 その4/hon
 
きた。バラの花を一輪。だけど、シホはそれまで育ててきた収穫の一切を、突然全て廃棄する気になったらしい。のみならず、花びらをことごとく裂いて床一面にばらまき、手首をハサミで切ってしまうとは。俺は、かつて生命の生まれたことのないこの屋敷で、新しい生命を育てることは、とても有意義なことだと思っていたよ。だけど、結局のところ、こんなふうになってしまって、今現在、屋敷にバラの花はひとつも残っていない」
「そうだったの。……そのミツル兄さんの取り分を、私にくれたの?」
「それは、とても美しいものだったし、お前にあげたら喜ぶんじゃないか、と思いついた。それで、お前にあげることにした。うれしくなかったかい?」
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