七人の話 その4/hon
 
?」
「うーん、それはもらってうれしかったけど……」
 釈然としない表情で、小遥が首をかしげた時、外から金物の音が響いた。
 カーン、カカッ、カーン、カーン、カカッ、カーン、カーン、カカッ、カーン……
「あれは、ヒイ兄が、私を呼んでいる」
「屋敷の見回り仕事か」
 小遥は急に机に突っ伏して、すねるようにいった。
「今日は、なんだか仕事に行きたくないな。ぼうっと一日休んでいたい気分」
「早く行かないと、ヒイ兄はうるさくいってくるんじゃないのか」
 充は苦笑していった。
「ううん。ヒイ兄はやさしいよ。やさしすぎるくらい」
 小遥は、鴨の彫刻と本を手にとり、立ち上がって、書棚の方へ向かっていった。
「私、行くね。これ、ありがとう」
 小遥は本を元にあった棚に戻すと、小走りで図書室を出て行った。
 充は木の角材を足元の棚から拾い上げて、机の上に置いた。このような木片は資材室へ行けば、ほぼ無尽蔵に転がっているのだった。
 充は、目の前の木材を見つめた。そうして、新たな作品(ワシか、タカか)に第一刀を刻んだものかどうか、思案していた。
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