「復想園」  /生田 稔
 



復想園          批評人
  (1)
 
悪魔の子は或る夜、スラム街の一室に泊まった。父の悪魔がなした永年の悪の業を見て廻った後、有名なそのスラム街のそれも最もひどい宿を撰んで、悪魔の子は泊まった。
 悪魔の子は、父の悪魔よりも賢くはあった。
なにしろ父が祖父から悪の業を受け継いだ頃の古めかしい無謀なあきらめに似た、がむしゃらな狂気と強引さをこの悪魔の子は厭ったのだから、嵐や火事や飢饉や旱魃やそして戦争、その他あらゆる無謀を彼は厭った。悪魔の子として出来損なっていた。新しい型の悪魔のようなものが悪魔の子の考えであった。兄や弟達が父の権能を受けて、世に出てふんぞり返って
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