十二月の手紙 デッサン/前田ふむふむ
も、胸の平原を風力計の針を走らせるように、わたしはわたしらしく、みずの声を聴いたことがあっただろうか。便箋に見苦しく訂正してある、傷ついた線は、言葉を伝えられなかったわたしです。夕立のなかを往く傘を持たない、わたしの冷たい両手です。吹雪のなかで、泣き叫ぶ手負った鶴のように、震えるうすい胸は、春の瞳孔に浮ぶみずうみを求めているのです。
・・・・・
いつまでも、同じ色の遠い空が、静かにわたしを見ていた。
某月某日、正午。
砂煙をあげて、豊かな日本語の柄を刻んだ小型ジープが、
四つ目の浅い川を渡った。
果てしなく続く白い三角形の箱の群を、
少しづつ裂きながら、すすむ。
背中から逃げて
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