十二月の手紙 デッサン/前田ふむふむ
げてゆく、均等に区分された灌木の平原。
後方から前へと滑らせながら追うと、
わたしの眼を、息絶えたふたりの幼児と自由を抱えて、
狂気する娼婦のような女の、
凍る眼差しが、突き刺した。
女は、泥水を浴びているのか。服が白い肌に食い込んでいる。
わたしは、気がつかなかったが、
驟雨が車体を叩きつけている。
霞みながら、道はおぼろげに、体裁をつくり、
また、壊して、そのなかから、つくられてゆく。
やや、不眠のためであろうか、目頭が重い。
先にある、なつかしい国境は、いのちを失い、
絵具のように流れている自由は、
女が辿った靄に煙る地平線のむこうまで、
続いているのだろう。
・・・・・
追伸。
まもなく、帰ります。
あなたの青い空をみるために戻ります。あなたが熱望した、瑞々しい山々は、荒れたローム層の水底に沈んでいました。そちらでは、あなたの、あの澄んだ空は、今日も、一面、青々と見えましたか。
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