停車場/佐々宝砂
から、
ちょっと場違いな心持ちで、
ちょっと不安だ。
喪服集団は急いでいる。顔にそう書いてある。
みな一様に、当たり前だが明るくない。
飛行機よりも新幹線よりも、
高速バスこそが目的地に早く着くことがある、
だからこそ何かの不幸に急いでバスに乗る、
そんな人たちがいるのだ。
もっともこっちはちっとも急いでいない、
それがなんだかさみしくて、
急いでいるふりをしてみるがうまくいかない。
喪服の人が一人、
煙草を吸っていいですかと訊ねてくる、
どうぞ、私も吸いますから、と、
アーミーハットに手をかけ会釈し微笑して、
ほんのすこしだけ、
喪服集団に馴染んだ気分になって、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)