停車場/佐々宝砂
 
て、
彼等と同じバスの出発を待っている。


(3)

もうすぐ貨物列車が到着する時間だ。
ここは煙草工場の工場内貨物駅。
貨物駅だって駅は駅で、
駅らしくプラットフォームもある、
なくっちゃ困る。
ちいさなころいちばん近い駅が貨物駅で、
貨物列車の車両をひとつふたつと数えた、
遠くからくる貨物車両には、
雪が積もっていたりした。
キハ、トラ、トム、そんな呪文のような略号の意味を、
当時の私は知らなかったし今も知らない。
ベルが鳴る。
列車が到着する。
荷物がおろされリフトで運ばれる。
今度はすでに準備してあった荷が積み込まれる。
ハングル文字で、
たぶん「健康のため吸い過ぎにご注意下さい」と
書かれてるのだと思うマイルドセブンのカートン、
パレットにいくつあるのだろう、
魔法のように車両に吸いこまれてゆく。
いま現場ラインは休み時間中だから、
のんきに煙草を吸いながらそれをみている。
貨物駅のプラットフォームで休憩するのが好きだ。
ベルが鳴る。
貨物列車が出発してゆく、
出発してゆく、
私をここに残したままで。

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