七人の話 その3/hon
化すると、必ず近いうちに両どなりの二号室と四号室が廃墟に侵されている。
秀人、および屋敷の住人たちは、このことを経験から自然と理解している。
このような廃墟の拡大を抑えるために、秀人は使われていない部屋を見てまわっているのである。おとずれた部屋をすみずみまで掃除、点検し、引き出しやクローゼットの中身を調べて、ノートに記録していく。ハンガーが五本、クリップが三個、聖書が一冊、ティッシュが一箱、せっけんが何個……むろん、それぞれの部屋から、さしたる新奇な発見はない。見てまわること、人の手で触れてまわる行為こそが重要なのであり、それが、そのまま廃墟化の予防となる。特に状態の良い部屋ならば、将来居
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