ブラジルの穴/Tsu-Yo
 
すっぽり入れるほど深くなっていた
突然バケツの淵が何か固い物を叩く
なんだろう
きみは固い物の周りの砂を手で払いのける
出てきたのはコンクリートだ
そこで砂場は終わっていた
ふと気がつくと
空の色はもう赤から群青へと
変わりはじめていた
そのとき公園の入り口の辺りから
きみを呼ぶ声が聞こえてきた
きみはすぐにそれが誰の声か分かった
おじいさんだ
帰りが遅いから探しに来たんだ
怒られると思ったきみは
砂場から動くことができなかった
だが砂場へやって来たおじいさんは
きみのことを怒りはしなかった
砂場にぽっかりと開いた大きな穴を見て
ほほうと笑いそれから
ずいぶ
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