ブラジルの穴/Tsu-Yo
 
いぶんと掘ったな、すごいぞ
と言ってきみの頭を撫でてくれた
ほめられたきみはだが
わっとばかりに泣き出してしまった
そうだ、ずいぶんと深く掘ったんだ
それでもブラジルにもどこにも
自分はたどり着くことができなかった
悔しさで涙がとめどなく溢れ出てくる
頬についていた砂が涙とともに
口の中へと流れ込んできて
じゃりじゃりと音を立てた

地面を掘り続ければブラジルにいける
そう言ったのはおじいさんだった
そのおじいさんも数年前に
ブラジルより
もっと遠い場所へと行ってしまった
今ではもうすっかりと大人になったきみは
ブラジルへの正しい行き方を知っている
それでもあの日のことを思い出すたびに
心のなかに今でもぽっかりと
大きな穴が開いているような気がするのだ


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